ちよじょ
千代女

冒頭文

女は、やっぱり、駄目なものなのね。女のうちでも、私という女ひとりが、だめなのかも知れませんけれども、つくづく私は、自分を駄目だと思います。そう言いながらも、また、心の隅(すみ)で、それでもどこか一ついいところがあるのだと、自分をたのみにしている頑固(がんこ)なものが、根づよく黒く、わだかまって居るような気がして、いよいよ自分が、わからなくなります。私は、いま、自分の頭に錆(さ)びた鍋(なべ)でも被

文字遣い

新字新仮名

初出

「改造」1941(昭和16)年6月

底本

  • 太宰治全集4
  • ちくま文庫、筑摩書房
  • 1988(昭和63)年12月1日