かじきょういく
火事教育

冒頭文

旧臘(きゅうろう)押し詰まっての白木屋(しろきや)の火事は日本の火災史にちょっと類例のない新記録を残した。犠牲は大きかったがこの災厄(さいやく)が東京市民に与えた教訓もまたはなはだ貴重なものである。しかしせっかくの教訓も肝心な市民の耳に入らず、また心にしみなければあれだけの犠牲は全くなんの役にも立たずに煙になってしまったことになるであろう。今度の火災については消防方面の当局者はもちろん、建築家、百

文字遣い

新字新仮名

初出

1933(昭和8)年1月(初出記載なし)

底本

  • 寺田寅彦随筆集 第四巻
  • 岩波文庫、岩波書店
  • 1948(昭和23)年5月15日、1963(昭和38)年5月16日第20刷改版