どくしょのこんじゃく
読書の今昔

冒頭文

現代では書籍というものは見ようによっては一つの商品である。それは岐阜提灯(ぎふちょうちん)や絹ハンケチが商品であると同じような意味において商品である。その一つの証拠にはどこのデパートメント・ストアーでもちゃんと書籍部というのが設けられている。そうして大部分はよく売れそうな書物を並べてあるであろうが、中にはまたおそらくめったには売れそうもない立派な書籍も陳列されている。それはちょうど手ぬぐい浴衣(ゆ

文字遣い

新字新仮名

初出

「東京日日」1932(昭和7)年1月

底本

  • 寺田寅彦随筆集 第三巻
  • 岩波文庫、岩波書店
  • 1948(昭和23)年5月15日、1963(昭和38)年4月16日第20刷改版