びぼうろく
備忘録

冒頭文

仰臥漫録 何度読んでもおもしろく、読めば読むほどおもしろさのしみ出して来るものは夏目先生の「修善寺日記(しゅぜんじにっき)」と子規(しき)の「仰臥漫録(ぎょうがまんろく)」とである。いかなる戯曲や小説にも到底見いだされないおもしろみがある。なぜこれほどおもしろいのかよくわからないがただどちらもあらゆる創作の中で最も作為の跡の少ないものであって、こだわりのない叙述の奥に隠れた純真なものがあらゆ

文字遣い

新字新仮名

初出

「思想」1927(昭和)2年9月

底本

  • 寺田寅彦随筆集 第二巻
  • 岩波文庫、岩波書店
  • 1947(昭和22)年9月10日、1964(昭和39)年1月16日第22刷改版