かんしょう ――ミクロネシヤじゅんとうきしょう――
環礁 ――ミクロネシヤ巡島記抄――

冒頭文

寂しい島 寂しい島だ。 島の中央にタロ芋田が整然と作られ、その周圍を蛸樹(たこ)やレモンや麺麭(パン)樹やウカル等の雜木の防風木が取卷いてゐる。その、もう一つ外側に椰子林が續き、さてそれからは、白い砂濱——海——珊瑚礁といつた順序になる。美しいけれども、寂しい島だ。 島民の家は西岸の椰子林の間に散らばつてゐる。人口は百七八十もあらうか。もつと小さい島を幾つも私は見て來た。全島

文字遣い

旧字旧仮名

初出

底本

  • 中島敦全集第一卷
  • 筑摩書房
  • 1976(昭和51)年3月15日