きょうかしのぶんしょう
鏡花氏の文章

冒頭文

日本には花の名所があるように、日本の文学にも情緒の名所がある。泉鏡花氏の芸術が即ちそれだ。と誰かが言って居たのを私は覚えている。併し、今時の女学生諸君の中に、鏡花の作品なぞを読んでいる人は殆んどないであろうと思われる。又、もし、そんな人がいた所で、そういう人はきっと今更鏡花でもあるまいと言うに違いない。にもかかわらず、私がここで大威張りで言いたいのは、日本人に生れながら、あるいは日本語を解しながら

文字遣い

新字新仮名

初出

「学苑」1933(昭和8)年7月

底本

  • 中島敦全集 3
  • ちくま文庫、筑摩書房
  • 1993(平成5)年5月24日