わらい
笑い

冒頭文

子供の時分から病弱であった私は、物心がついてから以来ほとんど医者にかかり通しにかかっていたような漠然(ばくぜん)とした記憶がある。幸いに命を取り止めて来た今日でもやはり断えず何かしら病気をもっていない時はないように思われる。簡単なラテン語の名前のつくような病気にはかかっていない時でも、なんとなしに自分のからだをやっかいな荷物に感じない日はまれである。ただ習慣のおかげでそれのはっきりした自覚を引きず

文字遣い

新字新仮名

初出

「思想」1922(大正11)年1月

底本

  • 寺田寅彦随筆集 第一巻
  • 岩波文庫、岩波書店
  • 1947(昭和22)年2月5日、1963(昭和38)年10月16日第28刷改版