きゅうりにっき
窮理日記

冒頭文

十日 動物教室の窓の下を通ると今洗ったらしい色々の骸骨がばらばらに笊(ざる)へ入れて干してある。秋の蠅(はえ)が二、三羽止ってやや寒そうに羽根を動かしている。十一日 垣にぶら下がっていた南瓜(かぼちゃ)がいつの間にか垂れ落ちて水引(みずひき)の花へ尻をすえている。我等が祖先のニュートンはいかにエライ者であったかと云う事を考えると隣の車井戸の屋根でアホーと鴉(からす)が鳴いた。十二日 傘を竪にさす。

文字遣い

新字新仮名

初出

「ホトトギス 第四巻第一号」1900(明治33)年10月10日

底本

  • 寺田寅彦全集 第一巻
  • 岩波書店
  • 1996(平成8)年12月5日