たかはまさんとわたし
高浜さんと私

冒頭文

高浜さんとはもうずいぶん久しく会わないような気がする。丸ビルの一階をぶらつく時など、八階のホトトギス社を尋ねて一度昔話でもしてみたいような気のすることがある。今度改造社から「虚子(きょし)の人と芸術」について何か書けと言われたについて、その昔話をペンですることにする。 三十余年前のことである。熊本の高等学校を出て東京へ出て来るについて色々の期待をもっていたうちでも、一つの重要なことは正岡

文字遣い

新字新仮名

初出

「現代日本文学全集」月報、改造社、1930(昭和5)年4月

底本

  • 寺田寅彦全集 第一巻
  • 岩波書店
  • 1996(平成8)年12月5日