八月二十六日床を出でて先ず欄干に倚(よ)る。空よく晴れて朝風やゝ肌寒く露の小萩のみだれを吹いて葉鶏頭(はげいとう)の色鮮やかに穂先おおかた黄ばみたる田面(たのも)を見渡す。薄霧(うすぎり)北の山の根に消えやらず、柿の実撒砂(まきすな)にかちりと音して宿夢(しゅくむ)拭うがごとくにさめたり。しばらくの別れを握手に告ぐる妻が鬢(びん)の後(おく)れ毛(げ)に風ゆらぎて蚊帳(かや)の裾ゆら〳〵と秋も早や