ゆめ |
| 夢 |
冒頭文
一 石の階段を上って行くと広い露台のようなところへ出た。白い大理石の欄干(らんかん)の四隅には大きな花鉢(ヴェース)が乗っかって、それに菓物(くだもの)やら花がいっぱい盛り上げてあった。 前面には湖水が遠く末広がりに開いて、かすかに夜霧の奥につづいていた。両側の岸には真黒な森が高く低く連なって、その上に橋をかけたように紫紺色の夜空がかかっていた。夥(おびただ)しい星が白熱した花火のように輝い
文字遣い
新字新仮名
初出
「明星 第一巻第五号」1922(大正11)年3月1日
底本
- 寺田寅彦全集 第一巻
- 岩波書店
- 1996(平成8)年12月5日