たんげさぜん 02 こけざるのまき
丹下左膳 02 こけ猿の巻

冒頭文

伊賀(いが)の暴(あば)れん坊(ぼう) 一 さっきの雷鳴で、雨は、カラッと霽(は)れた。 往来の水たまりに、星がうつっている。いつもなら、爪紅(つまべに)さした品川女郎衆の、素あしなまめかしいよい闇だけれど。 今宵は。 問屋場の油障子に、ぱっとあかるく灯がはえて、右往左往する人かげ。ものものしい宿場役人の提灯がズラリとならび、 「よしっ! ただの

文字遣い

新字新仮名

初出

「丹下左膳」東京日日新聞、大阪毎日新聞、1933(昭和8)年6月7日~11月5日

底本

  • 林不忘傑作選3 丹下左膳(三) こけ猿の巻
  • 山手書房新社
  • 1992(平成4)年8月20日