赤い屋根だつたけれど、小さい家にお婆さんがひとりで住んでゐた。 お婆さんは耳も遠いし、眼もかすんで不自由だつたけれど、何かいつも愉しさうだつた。娘の子のつかふやうな針箱をそばに置いて、涼しい処でゐねむりをするので好きだつた。家ぢゆうあけつぱなしなので白い蝶々がお婆さんの鼻さきにまで飛んで来た。初めは何かい喃と、ぢつと眼をこらしてめやにのたまつたまなじりをぱちぱちさせてゐたが、白い蝶々なの