ばくふ
瀑布

冒頭文

橋の上も、河添ひの道も、群集が犇めきあつてゐる。群集の後から覗いてみたが、澱んだ河の表面が、青黒く光つて見えるだけで、何も見えない。そのくせ群集は、折り重なるやうにして、水の上を覗いてゐる。何だらうと云ひあひながら、前の方へ押し出されたものは、見てしまつた安堵で、後から押される人間の力を振り切つて、犇めく人の間を、ぐんぐんと外側へ出て来てゐる。「何です?」いやにおもねるやうな尋づねかたで、訊くもの

文字遣い

新字旧仮名

初出

底本

  • 林芙美子全集 第15巻
  • 文泉堂出版
  • 1977(昭和52)年4月20日