あいするひとたち
愛する人達

冒頭文

ばうばうとした野原に立つて口笛をふいてみても もう永遠に空想の娘らは来やしない。 なみだによごれためるとんのずぼんをはいて 私は日傭人のやうに歩いてゐる。 ああもう希望もない 名誉もない 未来もない。 さうしてとりかへしのつかない悔恨ばかりが 野鼠のやうに走つて行つた。 萩原朔太郎といふ詩人は、もうすでに此世にはないけれども、此様な詩が残つてゐる。専造は、大学のなかの、銀杏並

文字遣い

新字旧仮名

初出

底本

  • 林芙美子全集 第十五巻
  • 文泉堂出版
  • 1977(昭和52)年4月20日