りんらく
淪落

冒頭文

わたしは、家のひとたちには無断で東京へ出て来た。終戦となつて間もなく、わたしの村へ疎開して来ていた東京の人達はあわてゝみんな東京へかえつてしまつた。田舎で一生を暮すような事を云つていた人達のくせに、戦争が済むと、本田さんも、山路さんもみんな東京へ戻つてしまつた。わたしは、東京と云うところはそんなにいゝところかと思つて、一度、東京をみたいと思つた。姉さんは、長い事大阪へ女中奉公に行つていたのだけれど

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • あいびき
  • 東方社
  • 1957(昭和32)年3月20日