しゅうしょく
就職

冒頭文

何をそんなに腹をたててゐるのかわからなかつた。埼子は松の根方に腰をかけて、そこいらにある小石をひろつては、海の方へ、男の子のやうな手つきで、「えゝいツ」と云つては投げつけてゐた。石は二三間位しか飛ばないで、その邊の砂地の上へ濕つた音をたてておちてゐる。 冬の濱邊は、時々遠くの方から、ごおつごおつと風を卷きたててゐた。空には雲の影もないのに薄陽が針をこぼしたやうに砂地にやはらかい光をおとし

文字遣い

旧字旧仮名

初出

底本

  • 惡鬪
  • 中央公論社
  • 1940(昭和15)年4月17日