ちいさいはな
小さい花

冒頭文

1 ずゐぶん遠いむかしの話だけれど、由はうどんやの女中をした事がありました。短いあひだではありましたが、はじめての奉公なので、これがお前の寝るところだと云はれた暗い納戸のやうな部屋へ這入りますと、いつぺんに涙が噴きあげて体がちつとも動かないのです。 そのうどんやは尾道と云ふ港町から船に乗つて小一時間位ありました。みんな「いんのしま」と云つてをりましたので、由は「犬の島」とでも書くのかと思つて

文字遣い

新字旧仮名

初出

底本

  • 林芙美子全集 第十五巻
  • 文泉堂出版
  • 1977(昭和52)年4月20日