めのうばん
瑪瑙盤

冒頭文

1 ミツシヱルは魚ばかり食べたがる女であつた。 魚屋の前を通ると、牡蛎籠の上に一列に並んでゐるレモンの粒々に、鼻をクンクンさせたり鮫の白い切り口を、何時までも指で押してみたりしては買へもせぬ癖に、何か口の中でブツブツものをいひながら、立ちつくしてゐることがあつた。 ミツシヱルは南フランスの生れで、髪は南国風に黒つぽい色をしてゐる。 「小さい(プチット)お嬢さん(マドモアゼル)

文字遣い

新字旧仮名

初出

底本

  • 林芙美子全集 第十五巻
  • 文泉堂出版
  • 1977(昭和52)年4月20日