ふじのたかね
不尽の高根

冒頭文

一 江戸と東京の富士 帰朝したのは、本年三月であった。横浜の波止場で、家族と友人の出迎えを受け、久しぶりで逢いたい顔に逢ったが、ただ一つ逢えない顔があった。それから暫らくのこと、私の勤務先は、日本橋の三越デパートメントの裏で、日本銀行と向いあったところだが、その建物の中で私たちが占めている室(へや)からは、太田道灌以来の名城を、松の緑の間に、仰ぎ見られるので、はじめて松樹国の日本に落ちついた

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 山岳紀行文集 日本アルプス
  • 岩波文庫、岩波書店
  • 1992(平成4)年7月16日