みを子が会社を馘(くび)になってから、時々、母親の全く知らない青年が訪ねて来た。 朝早くやってくることもあれば、昏れてからくることもあった。青年は一度でも、「こんちは」とか、「御めん下さい」とかいったためしがない。人の出てくるまで、のっそりと土間の隅に立っていた。 「みをさんいますか?」 ただそれだけいった。額の高い、眼の黒い、やや猫背の男——しかし一度、会った人は忘れないであろう印象の強い