ふでのしずく
筆のしづく

冒頭文

一 近日何ぞ傷心の事多きや、緑雨は窮死し、枯川は絏紲の人となる、風日暖にして木々の梢緑なる此頃の景色にも、我は中心転た寂寞の情に堪へず、意強き人は女々しと笑はん、我は到底情を矯むるの力なし。 緑雨は病めりき、左れど彼の死せるは病めるが為めに死せるにはあらず、病を養ふ能はざるが為めに死せるなり、繰返していふ、緑雨の死せるは病ありしが為めにあらず、金なかりしが為めなり。 彼は

文字遣い

新字旧仮名

初出

底本

  • 日本の名随筆 別巻95 明治
  • 作品社
  • 1999(平成11)年1月25日