その夜(よ)の月(つき)は、紺碧(こんぺき)の空(そら)の幕(まく)からくり拔(ぬ)いたやうに鮮(あざ)やかだつた。 夜露(よつゆ)に濡(ぬ)れた草(くさ)が、地上(ちじやう)に盛(も)り溢(あふ)れさうな勢(いきほ)ひで、野(の)を埋(うづ)めてゐた。 『お歸(かへ)んなさい、歸(かへ)つて下(くだ)さい。』『いえ。私(わたし)はもう歸(かへ)らないつもりです。』『どこまでひとを困(こま)