かのじょここにねむる
彼女こゝに眠る

冒頭文

その夜(よ)の月(つき)は、紺碧(こんぺき)の空(そら)の幕(まく)からくり拔(ぬ)いたやうに鮮(あざ)やかだつた。 夜露(よつゆ)に濡(ぬ)れた草(くさ)が、地上(ちじやう)に盛(も)り溢(あふ)れさうな勢(いきほ)ひで、野(の)を埋(うづ)めてゐた。 『お歸(かへ)んなさい、歸(かへ)つて下(くだ)さい。』 『いえ。私(わたし)はもう歸(かへ)らないつもりです。』 『どこま

文字遣い

旧字旧仮名

初出

底本

  • 若草6巻2号
  • 宝文館
  • 1930(昭和5)年2月1日