めいじざのしょかんをきょしくんにとわれて
明治座の所感を虚子君に問れて

冒頭文

○虚子に誘われて珍らしく明治座を見に行った。芝居というものには全く無知無識であるから、どんな印象を受けるか自分にもまるで分らなかった。虚子もそこが聞きたいので、わざわざ誘ったのである。もっとも幼少の頃は沢村田之助とか訥升(とっしょう)とかいう名をしばしば耳にした事を覚えている。それから猿若町(さるわかちょう)に芝居小屋がたくさんあったかのように、何となく夢ながら承知している。しかも、あとから聞くと

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 夏目漱石全集10
  • ちくま文庫、筑摩書房
  • 1988(昭和63)年7月26日