ぎもんとくうそう
疑問と空想

冒頭文

一 ほととぎすの鳴き声 信州(しんしゅう)沓掛(くつかけ)駅近くの星野温泉(ほしのおんせん)に七月中旬から下旬へかけて滞在していた間に毎日うるさいほどほととぎすの声を聞いた。ほぼ同じ時刻にほぼ同じ方面からほぼ同じ方向に向けて飛びながら鳴くことがしばしばあるような気がした。 その鳴き声は自分の経験した場合ではいわゆる「テッペンカケタカ」を三度くらい繰り返すが通例であった。多くの場合に

文字遣い

新字新仮名

初出

「科学知識」1934(昭和9)年10月

底本

  • 寺田寅彦随筆集 第五巻
  • 岩波文庫、岩波書店
  • 1948(昭和23)年11月20日、1963(昭和38)年6月16日第20刷改版