ばけもののしんか
化け物の進化

冒頭文

人間文化の進歩の道程において発明され創作されたいろいろの作品の中でも「化け物」などは最もすぐれた傑作と言わなければなるまい。化け物もやはり人間と自然の接触から生まれた正嫡子であって、その出入する世界は一面には宗教の世界であり、また一面には科学の世界である。同時にまた芸術の世界ででもある。 いかなる宗教でもその教典の中に「化け物」の活躍しないものはあるまい。化け物なしにはおそらく宗教なるも

文字遣い

新字新仮名

初出

「改造」1929(昭和4)年1月

底本

  • 寺田寅彦随筆集 第二巻
  • 岩波文庫、岩波書店
  • 1947(昭和22)年9月10日、1964(昭和39)年1月16日第22刷改版