しばかり
芝刈り

冒頭文

私は自分の住み家の庭としてはむしろ何もない広い芝生(しばふ)を愛する。われわれ階級の生活に許される程度のわずかな面積を泉水や植え込みや石燈籠(いしどうろう)などでわざわざ狭くしてしまって、逍遙(しょうよう)の自由を束縛したり、たださえ不足がちな空の光の供給を制限しようとは思わない。樹木ももちろん好きである、美しい草花以上にあらゆる樹木を愛する。それでもし数千坪の庭園を所有する事ができるならば、思い

文字遣い

新字新仮名

初出

「中央公論」1921(大正10)年1月

底本

  • 寺田寅彦随筆集 第一巻
  • 岩波文庫、岩波書店
  • 1947(昭和22)年2月5日、1963(昭和38)年10月16日第28刷改版