どうわにおけるものがたりせいのそうしつ
童話における物語性の喪失

冒頭文

放送局がラジオ小説を募集するとき次のような条件をつける。一、三十分で完結するもの。一、登場人物は×名位(くらい)が好都合である。一、明朗健全にして、国民性をよく発揚しているものたること。そしてこれは辞(ことわ)ってはないが、芸術的にすぐれた作品でなければならぬことは勿論(もちろん)である。これらの諸条件を聞かされると、人は、それに一々適(かな)った作品を書くことはいかにむつかしいかを思うのである。

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 新美南吉童話集
  • 岩波文庫、岩波書店
  • 1996(平成8)年7月16日