きつえんへき
喫煙癖

冒頭文

札幌の場末の街、豊平(とよひら)を出た無蓋二輪の馬車が、北を指して走っている砂利道を、月寒(つきさっぷ)の部落に向けてがたごとと動いて行った。 馬車の上には二人の乗客が対(むか)い合って乗っていた。二人とも、いずれも身すぼらしい身装(みなり)で、一人は五十近い婆(ばあ)さんであった。一人はやはり、同じ年ごろの爺(じい)さんであった。 爺さんは引っ切りなしに、煙草を燻(くゆ)らし

文字遣い

新字新仮名

初出

「北海タイムス」1931(昭和6年)9月、「河北新報」1931(昭和6年)10月

底本

  • 佐左木俊郎選集
  • 英宝社
  • 1984(昭和59)年4月14日