吉をどのような人間に仕立てるかということについて、吉の家では晩餐(ばんさん)後毎夜のように論議せられた。またその話が始った。吉は牛にやる雑炊(ぞうすい)を煮(た)きながら、ひとり柴の切れ目からぶくぶく出る泡を面白そうに眺めていた。 「やはり吉を大阪へやる方が好い。十五年も辛抱(しんぼう)したなら、暖簾(のれん)が分けてもらえるし、そうすりゃあそこだから直ぐに金も儲(もう)かるし。」 そ