もぐらとらくばん
土鼠と落盤

冒頭文

一 くすれたような鉱山(やま)の長屋が、C川の両側に、細長く、幾すじも這っている。 製煉所の銅煙は、禿げ山の山腹の太(ふと)短かい二本の煙突から低く街に這いおりて、靄のように長屋を襲った。いがらっぽいその煙にあうと、犬もはげしく、くしゃみをした。そこは、雨が降ると、草花も作物も枯れてしまった。雨は落ちて来しなに、空中の有毒瓦斯を溶解して来る。 長屋の背後の二すじの連山には

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 黒島傳治全集 第二巻
  • 筑摩書房
  • 1970(昭和45)年5月30日