バルタザアル |
| バルタザアル |
冒頭文
一 其頃はギリシヤ人にサラシンとよばれたバルタザアルがエチオピアを治めてゐた。バルタザアルは色こそ黒いが、目鼻立の整つた男であつた。其上又素直なたましひと大様な心とを持つた男であつた。 即位の第三年行年二十二の時に王は国を出て、シバの女王バルキス聘問(へいもん)の途に上つた。 追随するのは魔法師のセムボビチスと宦官(くわんぐわん)のメンケラとである。行列の中には七十五頭の駱駝がゐて、それが
文字遣い
新字旧仮名
初出
「新思潮」1914(大正3)年2月
底本
- 芥川龍之介全集 第一巻
- 岩波書店
- 1995(平成7)年11月8日