トカトントン
トカトントン

冒頭文

拝啓。 一つだけ教えて下さい。困っているのです。 私はことし二十六歳です。生れたところは、青森市の寺町です。たぶんご存じないでしょうが、寺町の清華寺の隣りに、トモヤという小さい花屋がありました。わたしはそのトモヤの次男として生れたのです。青森の中学校を出て、それから横浜の或る軍需工場の事務員になって、三年勤め、それから軍隊で四年間暮し、無条件降伏と同時に、生れた土地へ帰って来ま

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • ヴィヨンの妻
  • 新潮文庫、新潮社
  • 1950(昭和25)年12月20日、1985(昭和60)年10月30日63刷改版