しんゆうこうかん
親友交歓

冒頭文

昭和二十一年の九月のはじめに、私は、或る男の訪問を受けた。 この事件は、ほとんど全く、ロマンチックではないし、また、いっこうに、ジャアナリスチックでも無いのであるが、しかし、私の胸に於いて、私の死ぬるまで消し難い痕跡(こんせき)を残すのではあるまいか、と思われる、そのような妙に、やりきれない事件なのである。 事件。 しかし、やっぱり、事件といっては大袈裟(おおげさ)か

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • ヴィヨンの妻
  • 新潮文庫、新潮社
  • 1950(昭和25)年12月20日、1985(昭和60)年10月30日63刷改版