しっぱいえん
失敗園

冒頭文

(わが陋屋(ろうおく)には、六坪ほどの庭があるのだ。愚妻は、ここに、秩序も無く何やらかやら一ぱい植えたが、一見するに、すべて失敗の様子である。それら恥ずかしき身なりの植物たちが小声で囁(ささや)き、私はそれを速記する。その声が、事実、聞えるのである。必ずしも、仏人ルナアル氏の真似(まね)でも無いのだ。では。) とうもろこしと、トマト。 「こんなに、丈ばかり大きくなって、私は、どんなに恥

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 太宰治全集3
  • ちくま文庫、筑摩書房
  • 1988(昭和63)年10月25日