うばすて
姥捨

冒頭文

そのとき、 「いいの。あたしは、きちんと仕末(しまつ)いたします。はじめから覚悟していたことなのです。ほんとうに、もう。」変った声で呟(つぶや)いたので、 「それはいけない。おまえの覚悟というのは私にわかっている。ひとりで死んでゆくつもりか、でなければ、身ひとつでやけくそに落ちてゆくか、そんなところだろうと思う。おまえには、ちゃんとした親もあれば、弟もある。私は、おまえがそんな気でいるのを

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 太宰治全集2
  • ちくま文庫、筑摩書房
  • 1988(昭和63)年9月27日