うそ

冒頭文

「戦争が終ったら、こんどはまた急に何々主義だの、何々主義だの、あさましく騒ぎまわって、演説なんかしているけれども、私は何一つ信用できない気持です。主義も、思想も、へったくれも要(い)らない。男は嘘(うそ)をつく事をやめて、女は慾を捨てたら、それでもう日本の新しい建設が出来ると思う。」 私は焼け出されて津軽の生家の居候(いそうろう)になり、鬱々(うつうつ)として楽しまず、ひょっこり訪ねて来た小

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 太宰治全集8
  • ちくま文庫、筑摩書房
  • 1989(平成元)年4月25日