じゅもくとそのは 26 もものみ
樹木とその葉 26 桃の実

冒頭文

武藏(むさし)から上野(かうづけ)へかけて平原を横切つて汽車が碓氷(うすひ)にかゝらうとする、その左手の車窓に沿うて仰がるゝ妙義山の大岩壁は確かに信越線中での一異景である。丁度そのあたり、横川驛で機關車は電氣に代る。そして十分か十五分の停車時間がある。辨當賣の喧しい聲々の間に窓を開いて仰ぐだけに、空を限つて聳え立つたこの異樣な山の姿が一層旅心地を新たにする樣だ。 驛から發車して間もなく、

文字遣い

旧字旧仮名

初出

底本

  • 若山牧水全集 第七卷
  • 雄鷄社
  • 1958(昭和33)年11月30日