じゅもくとそのは 25 あるひのちゅうさん
樹木とその葉 25 或る日の昼餐

冒頭文

或る日の午前十一時頃、書き惱んでゐる急ぎの原稿とその催促の電報と小さな時計とを机の上に並べながら、私は甚だ重苦しい心持になつてゐた。 机に兩肱をついて窓のそとを見てゐると頻りに櫻が散つてゐる。小さな窓から見える間に一ひらか二ひらか、若(も)しくははら〳〵とうち連れて散り亂れてゐるか、その花片の見えない一瞬間だに無い樣に、ひら〳〵、ひら〳〵、はら〳〵と散つてゐる。曇り日の濕つた空氣の中に何

文字遣い

旧字旧仮名

初出

底本

  • 若山牧水全集 第七卷
  • 雄鷄社
  • 1958(昭和33)年11月30日