じゅもくとそのは 24 おんせんやどのにわ
樹木とその葉 24 温泉宿の庭

冒頭文

旅と云つても、ほんの一夜泊の話なのですが——。 私のいま住んでゐます沼津から程近く、六七ヶ所の温泉があります。 なかの吉奈(よしな)温泉から、病氣でいま此處に來てゐる、おひまならお遊びにおいで下さいませんかといふ思ひがけない手紙がF——さんから來ました。F——さんは我々の歌の社中の人で、そして踊りの師匠として世に聞えた婦人なのです。夙うから病氣入院中の事をば知つてゐたが、もう湯

文字遣い

旧字旧仮名

初出

底本

  • 若山牧水全集 第七卷
  • 雄鷄社
  • 1958(昭和33)年11月30日