じゅもくとそのは 23 うめのはなさくらのはな
樹木とその葉 23 梅の花桜の花

冒頭文

きさらぎは梅咲くころは年ごとにわれのこころのさびしかる月 梅の花が白くつめたく一輪二輪と枯れた樣な枝のさきに見えそむる。吹きこめた北の風西の風がかすかな東風(こち)にかはらうとする。その頃になるときまつて私は故のない憂欝に心を浸されてしまふ。 眼をあけてゐるのもいやだが、而かも心の底は明るく冷やけく澄んで居る。爲事のいやになるのもこの頃である。煙草のいゝのを喫ひたくなるのもこの

文字遣い

旧字旧仮名

初出

底本

  • 若山牧水全集 第七卷
  • 雄鷄社
  • 1958(昭和33)年11月30日