じゅもくとそのは 11 なつのせきりょう
樹木とその葉 11 夏の寂寥

冒頭文

わが家の、 北に面した庭に、 南天、柘榴(ざくろ)、檜葉(ひば)、松、楓(かへで)の木が 小さな木立をなしてゐる。 南天の蔭には、 洗面所の水が流るゝため、 虎耳草(ゆきのした)、秋海棠(しうかいだう)、齒朶(しだ)など、 水氣を好む植物が 一かたまりに茂つて、 あたりは一面の苔となつてゐる。 その中の柘榴(ざくろ)の木に、 今年はひどく花がついた。 こまかな枝や葉の茂みか

文字遣い

旧字旧仮名

初出

底本

  • 若山牧水全集 第七卷
  • 雄鷄社
  • 1958(昭和33)年11月30日