じゅもくとそのは 05 なつをあいすることば
樹木とその葉 05 夏を愛する言葉

冒頭文

夏と旅とがよく結び付けられて稱(とな)へらるゝ樣になつたが、私は夏の旅は嫌ひである。山の上とか高原とか湖邊海岸といふ所にずつと住み着いて暑い間を送るのならばいゝが、普通の旅行では、あの混雜する汽車と宿屋とのことをおもふと、おもふだに汗が流るゝ。 夏は浴衣一枚で部屋に籠るが一番いゝ樣である。靜座、仰臥、とりどりにいゝ。ただ專ら靜かなるを旨とする。食が減り、體重も減る樣になると、自づと瞳が冴

文字遣い

旧字旧仮名

初出

底本

  • 若山牧水全集 第七卷
  • 雄鷄社
  • 1958(昭和33)年11月30日