あずさがわのじょうりゅう
梓川の上流

冒頭文

一 明科(あかしな)停車場を下りると、犀(さい)川の西に一列の大山脈が峙(そばだ)っているのが見える、我々は飛騨山脈などと小さい名を言わずに、日本アルプスとここを呼んでいる、この山々には、名のない、あるいは名の知られていない高山が多い、地理書の上では有名になっていながら、山がどこに晦(か)くれているのか、今まで解らなかったのもある——大天井(おてんしょう)岳などはそれで——人間は十人並以上に

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 山岳紀行文集 日本アルプス
  • 岩波文庫、岩波書店
  • 1992(平成4)年7月16日