あゆづりにすごしたなつやすみ
鮎釣に過した夏休み

冒頭文

わたしは、日向(ひうが)うまれである。むづかしくいふと宮崎縣東臼杵郡東郷村大字坪谷村小字石原一番戸に生れた。明治十八年八月廿四日のことであつたさうだ。村は尾鈴山の北麓に當る。そこの溪間だ。この溪は山陰(やまげ)村にて耳川に注ぎ、やがて美々津にて海に入る。山陰村より美々津港までの溪谷美(といつても立派な河であるが)は素晴らしいものであるが、邊鄙(へんぴ)のことゝて誰も知るまい。同地方特産の木炭の俵の

文字遣い

旧字旧仮名

初出

底本

  • 若山牧水全集 第八巻
  • 雄鶏社
  • 1958(昭和33)年9月30日