彼は意地悪でもなく、といって、残忍酷薄な男でもなかった。ただ非常にかわった道楽をもっていたというだけのことだ。しかしその道楽もたいていやりつくしてしまって、いまでは、それにもなんら溌剌たる興味を感じないようになったのである。 彼はたびたび劇場へでかけた。けれど、それは演技を観賞したり、オペラ・グラスで見物席を見まわしたりするのが目的ではなくて、そうしてたびたびいっているうちに、とつぜんに