かせいのまじゅつし
火星の魔術師

冒頭文

高原の秋 「いい空気だなア——」 英二はそういって、小鼻をびくびくさせ、両の手を野球の投手のように思い切り振廻した。 「うん。まったく澄み切ってるからね、——どうだい矢ッ張り来てよかったろう、たまにこういうところに来るのも、なんともいえん気持じゃないか」 大村昌作は、あまり気のすすまなかったらしい英二を、勧誘これつとめた挙句、やっとこの、いささか季節はずれの高原に引っ張って来た

文字遣い

新字新仮名

初出

「ユーモアクラブ」1941(昭和16)年5月

底本

  • 火星の魔術師
  • 国書刊行会
  • 1993(平成5)年7月20日