プラチナしんけいのしょうじょ
白金神経の少女

冒頭文

バー・オパール 日が暮れて、まだ間もない時分だった。 街の上には、いつものように黄昏(たそがれ)の遽(あわた)だしさが流れて、昼の銀座から、第二の銀座に変貌しつつあった。が、この地下の一室に設けられたバー・オパールの空気だけは、森閑(しんかん)として、このバーが設けられて以来の、変りない薄暗さの中に沈淪(ちんりん)していた。バー・オパールは昼も夜も、いつもこのように静かで暗かった。

文字遣い

新字新仮名

初出

「奇譚」1939(昭和14)年8月

底本

  • 火星の魔術師
  • 国書刊行会
  • 1993(平成5)年7月20日