まぞう
魔像

冒頭文

一 寺田洵吉(じゅんきち)は今日も、朝から方々職を探してみたが、何処にもないとわかると、もう毎度のことだったが、やっぱり、又新たな失望を味って、当(あて)もなく歩いている中、知らず知らずに浅草公園に出ているのであった。 ——これは寺田の「淋しい日課」だった。郷里(くに)で除隊されると、もう田舎で暮すのがバカバカしくてならず、色々考えた末、東京のタッタ一人の叔父を頼って、家を飛出して

文字遣い

新字新仮名

初出

「探偵文学」1936(昭和11)年5月

底本

  • 火星の魔術師
  • 国書刊行会
  • 1993(平成5)年7月20日