スポールティフなしょうふ
スポールティフな娼婦

冒頭文

夜の小湊は波打ぎわの万華鏡のなかに、女博物館が開花していた。その夜は湾内に快速巡洋艦アメリカ号が投錨(とうびょう)した夜なので、女達の首にはたくましいヤンキーの水兵の腕がからんでいた。山下界隈の怪しい酒場で酔泥(よいど)れた一列の黒奴の火夫達が、最新流行歌をうたって和服の蠱惑(こわく)の街に傾いた。 その前日から、小湊のチョップ・ハウスの断髪女を中心にした三つの殺人事件が本牧横町の街を騒

文字遣い

新字新仮名

初出

「文学時代」昭和5年2月号(*原題には「横浜」という副題がある)

底本

  • 吉行エイスケ作品集
  • 文園社
  • 1997(平成9)年7月10日